結論
ドイツの所得税(Einkommensteuer)は 累進課税。2026 年は 基礎控除 €12,348 までは非課税、そこから 14% で始まり最高 45% まで上がる。加えて 連帯付加税(Soli)5.5% と 教会税 8〜9%(無宗教なら不要)が所得税額に対して乗る。毎月の源泉徴収は Steuerklasse(税クラス I〜VI) で決まり、確定申告で精算する。金額は毎年動くので、正確な値は必ず公式(§32a EStG / BMF)で確認を。
ドイツで働く日本人(会社員・フリーランス・帯同配偶者)向けに、所得税の仕組み・税率・税クラス・付加税・申告期限 を総論として整理します。具体的な還付手順は 確定申告(会社員向け)、自営業の税務は フリーランス税務概要 を参照。
本ページの金額は 2026 年時点で確認した目安です。基礎控除・税率の刻み・Soli の免除枠は毎年の税制改正で変わります。申告・試算の際は必ず §32a EStG(税率表) と BMF で最新値を確認してください。
所得税は誰にかかる?(居住者判定)
- ドイツに 住所または常居所(183 日以上が目安)があると 全世界所得が課税対象(無制限納税義務)。
- 日本の給与・配当なども申告対象になり得るが、日独租税条約で二重課税は調整される。
- 居住者判定と日本側所得の扱いは複雑なので、詳細は 確定申告の解説 と税理士へ。
基礎控除(Grundfreibetrag)2026
- 2026 年の基礎控除: 単身 €12,348 / 夫婦合算 €24,696。この額までは所得税 €0。出典: §32a EStG(正確な値は要確認)。
- 基礎控除は毎年物価連動で引き上げられる(2025 → 2026 も増額)。
税率の構造(14% → 42% → 45%)
ドイツの所得税は「刻みごとに一定税率」ではなく、線形累進(所得が上がるほど限界税率が滑らかに上昇)。ざっくりの節目は次の通り(2026・単身の課税所得ベース、要確認)。
| 課税所得(zvE・単身) | 限界税率の目安 |
|---|---|
| 〜 €12,348 | 0%(基礎控除内) |
| €12,349 〜 約 €69,878 | 14% → 42% に線形上昇 |
| 約 €69,879 〜 €277,825 | 42%(Spitzensteuersatz) |
| €277,826 〜 | 45%(いわゆる Reichensteuer) |
出典: §32a EStG。夫婦合算(Splitting)の場合は各閾値がおおむね 2 倍になります。
42% は「その先の 1 ユーロにかかる率」であって、所得全体の平均税率ではありません。基礎控除と低率ゾーンがあるため、実効税率(手取りベースの負担率)はもっと低くなります。手取りの体感は 税額・手取りシミュレータ で確認できます。
連帯付加税(Solidaritätszuschlag / Soli)
- 税率: 所得税額の 5.5%(所得そのものではなく「税額」に対して)。
- 免除枠(2026): 所得税額が単身 €20,350 / 夫婦 €40,700 以下なら Soli は €0。多くの一般的な給与所得者は非課税ゾーン。出典: SolZG(正確な免除枠は要確認)。
- 免除枠の少し上には緩和ゾーン(Milderungszone)があり、いきなり満額はかからない。
教会税(Kirchensteuer)
- 税率: 所得税額の 8%(バイエルン・バーデン=ヴュルテンベルク)/ その他の州は 9%。
- 無宗教なら不要: Anmeldung(住民登録)時に 「konfessionslos(無宗教)」 と申告すれば源泉徴収されません。
- 既に教会所属で登録済みなら、脱退(Kirchenaustritt)を Standesamt / Amtsgericht で手続きすると以後は非課税。
Anmeldung の宗教欄で、キリスト教系の宗派を選ぶ/空欄の扱いを誤ると、教会税が自動で源泉徴収されることがあります。宗教的所属がないなら konfessionslos を明確に。
税クラス(Steuerklasse I〜VI)
毎月の源泉徴収額は 税クラスで決まります(最終的な税額は確定申告で精算)。
| クラス | 対象 | ざっくり |
|---|---|---|
| I | 独身・離婚・死別・別居中の既婚 | 単身の標準 |
| II | ひとり親(Entlastungsbetrag 対象) | 単身より控除多め |
| III | 既婚で自分が高所得側(V とペア) | 源泉が軽い(高所得側) |
| IV | 既婚で夫婦の所得が近い | 結婚時の自動初期設定 |
| V | 既婚で低所得側(III とペア) | 源泉が重い(低所得側) |
| VI | 副業・2 つ目の雇用 | 基礎控除なし・源泉最重 |
- 単身: 原則 I(子がいるひとり親は II)。
- 夫婦: 所得が近ければ IV / IV、一方が世帯収入の 6 割超なら III / V が毎月の手取り上有利になりやすい(ただし年間の最終税額は同じで、精算で調整)。
- 出典: §38b EStG。
III/V にしても IV/IV にしても、1 年通した税額そのものは変わりません(差は確定申告で精算)。どちらが「得」かは断定できず個別事情によるため、選択は税理士や公式情報で確認してください(本ページは助言ではありません)。
所得税と社会保険料は別物
手取りが減る要因は所得税だけではありません。社会保険料(Sozialabgaben:健康保険・年金・介護・失業) が別に給与から引かれます。
- 健康保険(GKV/PKV)の考え方は 公的 vs 民間の違い を参照。
- 「額面 → 手取り」の全体像は 税額・手取りシミュレータ で所得税+社会保険料をまとめて試算できます。
子どもがいる場合(Kindergeld / Kinderfreibetrag)
- 児童手当 Kindergeld と 税額控除 Kinderfreibetrag があり、確定申告で 有利な方が自動適用(Günstigerprüfung)。
- 詳細は ドイツの児童手当 Kindergeld を参照。
確定申告の期限(2025 年分・2026 年提出)
| 区分 | 期限 |
|---|---|
| 義務申告(自分で提出) | 2026 年 7 月 31 日 |
| 義務申告(税理士 / Lohnsteuerhilfe 経由) | 2027 年 3 月 1 日 |
| 任意申告(還付狙い・4 年遡及) | 2029 年 12 月末 |
出典: §149 AO。近年はコロナ特例の影響で年により日付が動くため、正確な期限は必ず Finanzamt / ELSTER で確認を。手順は 確定申告(会社員向け)。
FAQ
Q1. ドイツの所得税は日本より高いですか?
A1. 限界税率は高め(最高 45% + Soli + 教会税)ですが、基礎控除・各種控除があるため 実効税率は所得次第。社会保険料が別に重い点も含めて「手取り」で比較するのが実務的です。
Q2. 額面€60,000 だと手取りはいくらですか?
A2. 税クラス・州・保険(GKV/PKV)・教会税の有無で変わるため一概に言えません。目安は 税額・手取りシミュレータ で。数値は個別条件で大きく動きます。
Q3. 教会税は必ず払いますか?
A3. いいえ。宗教的所属がなければ Anmeldung で konfessionslos と申告すれば非課税です。
Q4. 2026 年の基礎控除はいくらですか?
A4. 単身 €12,348(夫婦合算 €24,696)が目安。毎年引き上げられるため最新値は §32a EStG で確認してください。
Q5. フリーランスも同じ税率ですか?
A5. 所得税の税率表(§32a)は共通です。ただし所得の計算方法(経費・前払税 Vorauszahlung・付加価値税)が異なります。詳細は フリーランス税務概要。
関連記事
- 確定申告(会社員向け) — 還付手順・ELSTER
- フリーランス税務概要 — 自営業の所得計算
- ドイツの児童手当 Kindergeld — Kinderfreibetrag との関係
- 公的 vs 民間の健康保険 — 社会保険料の一角
- お金まわり完全ガイド — 送金・口座・年金の pillar
関連ツール
- 税額・手取りシミュレータ — 所得税+社会保険料から手取りを試算
- 生活費シミュレータ — 手取りを月次収支に反映
出典・参照
本記事の数値・期限・制度説明は、以下の公式一次ソースと突合済 (2026-07-29 時点)。
- §32a EStG - 所得税の税率表(公式)gesetze-im-internet.de
- §38b EStG - Steuerklasse(税クラス・公式)gesetze-im-internet.de
- SolZG - 連帯付加税(公式)gesetze-im-internet.de
- §149 AO - 申告期限(公式)gesetze-im-internet.de
- Bundesfinanzministerium (BMF) - 所得税bundesfinanzministerium.de